星「とてもおやすみなさい」

ある日くまさんにであった、の歌がずっとふしぎだなと思ってる。いまでもよくかんがえている。

「そもそも、くまにであったとってもおおきな日なのに、ある日ではじまるのはどういうことなんだろうね。この日、だよね。ずっとくまにあの日あのときであった、この日だよ」

「あれってなんだか5月の歌なんじゃない。5月の森のようなきがする。5月のある日で。そしてそれはたぶん5月がじつはよくわからない季節だからじゃない。あついのかさむいのか、じぶんがどこにいるかわからず、ふわふわしてるときに、くまからにげなさいといわれる。そのくまもふわふわしてるし、じぶんもふわふわしてる、だからおとしものをするし、おおくのものやことをおとしてわすれてきたんだともおもう。しっかりとうしなってきた。そして今、にげている。この森で」

「りゆう、5月ね」

のちのち、ずっとかんがえる。あの日森のあふれる光のなかで、ほんきで走りながら、なににであい、なにをえて、なにをうしなったかを。そういううた。


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この記事を書いた人
yagimotoyasufuku
柳本々々(やぎもと・もともと)
1982年、新潟県生まれ 川柳作家 第57回現代詩手帖賞受賞
安福 望(やすふく・のぞみ)
1981年、兵庫県生まれ イラストレーター