「起きて」でおわるてがみを

さいきん、「生きてたから。」で終わるてがみをもらった。

そのてがみには、「朝です。おはよう。今、起きました。」や「あっ、特急がきました。いま、乗り換えますよ。晴れています」など書いてあった。「わたしは橋がすきなんです。橋のこと、しっていますか?」や「あやまらなくていいですよ」とも書いてあった。いろんなふうにこころが感じ取れるてがみだった。

わたしは、「やさしいとこわいはいったりきたりしているようなきがします」とへんじを書いた。そのときなぜか、どうして、やぎはてがみをたべてしまったんだろう、でもたべちゃったことでやさしい未来にたどりつけることもあるのではないかと、ふとかんがえた。

もらったてがみのいちばんさいごには、「生きてたから。」と書いてあった。「生きてたから。」でおわるてがみをいつか書いてみたいなと、おもう。


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この記事を書いた人
yagimotoyasufuku
柳本々々(やぎもと・もともと)
1982年、新潟県生まれ 川柳作家 第57回現代詩手帖賞受賞
安福 望(やすふく・のぞみ)
1981年、兵庫県生まれ イラストレーター