風で説明するようになったよね
ソファーでイランの映画をみているうちにうたた寝してしまう。秋のちょうどいいあたたかさとつめたさのなかで、部屋のなかには風も吹いていない。
イランの映画は、別れた夫と妻とその恋人とその妻をめぐる映画で、別れた夫と妻はじぶんのこころを隠しつつ騙しつつ二人で会話している。わたしは目を閉じたり開いたりしている。ときどきわたしはうすく気が遠くなる。
妻がかえってきて、パンを買ってきたよというので、わたしはうとうとおきる。
パンを食べながら妻とイランの映画をみる。
これなんのパン? とおおきなふくろをごそごそしながらきくと、枝豆とチーズのパンだよという。
ちいさな包装のふくろをやぶりながらパンにかみつくと、あれこれ入ってるのひじき煮だよ、と妻にいう。ほら。
じゃあまちがってかってきちゃったんだ、枝豆のパンのとなりにひじき煮のパンがあったから。そう。うん。
ねえあのさ、ソースを使わないでつくった焼きそばパンもあるよ。えっ、だいじょうぶなの、そんなことまでして。そうか、そんなことまでもうできるようになってるんだ。うん。それももらうよ。ぜんぶもらうよ。
ふたりでパンを食べながらイランの映画をみている。風は無風。別れた妻と夫はやりなおそうとしている。
そういう夢をみた。