春の階段ふわっふわっと降りてくる
むかし、東横線で、満員電車のなかで酔ったおんなのひとからふわっとうしろから抱きしめられたことがあった。ほんとうにおどろいて、わたしはふわっとぬけた。ふりかえったら、そのおんなのひとはふわふわしていて、満員電車だけれど、すこしずつ女のひとのところだけ空間ができていった。
電車の窓はあいていて、あいた窓から春の風がふきこんでくる。おんなのひとは目を閉じたまますごく楽しそうで、あんなに楽しそうに目をとじていたことがあったかなあとおもう。大事なときには目をつむっていたはずなんだけれども。