しなないできょうの桜を見てもらう
加藤治郎さんの歌集『Confusion』に引用されてある斉藤斎藤さんの「戦うのはいいけれど、負け方は考えてあるのかな」。思想家の鶴見俊輔さんも戯曲家のベケットも〈負け方〉のことをいつも考えていたけれど、戦い方ではなく、うまい負け方、うまい失敗の仕方というのがある。壊滅しないために。戦う前より悪化させないために。
ベケットのことば、「失敗してみろ、もういちど失敗してみろ、こんどは少しだけうまく失敗してみろ」。もしかしたら文学が教えてくれるのは、うまい失敗のやりかたかもしれない。どんなふうに失敗できるか、どう生産的な失敗ができるか、だいなしにしない失敗ってなんなのか。じょうずな負け戦ってなんだろう。ぼくは、どこかでだれかから教えてもらったはずなんだけど。