六月のほうに流れてくあなたの「あっ」

流れ星をみるたびに「あっ」と声をだしてしまうひとの話をわたしは直接きいた。だからいつも願い事はかなえられないって。でも月のほうに、もっといえば月やそれをめぐる星々に「あっ」がちょくせつ届くんだって。それは、いっしゅんの、じぶんでも知らないこころが鮮やかに入った、てがみのようなもんだって。わたしはなんとなくそれを横になりながら聞いた。横になりながらっていうのはつまりそれがメールで来た文章で、わたしは横になりながらそれを読んでいたわけなんだけれど、なんだかその、そのひとの流れ星のところだけ、そのひとの声をきいたようなきがして、「聞いた」という動詞を使ってみようと、今、そういうふうに決めた。


『バームクーヘンでわたしは眠った もともとの川柳日記』(春陽堂書店)柳本々々(句と文)・安福 望(イラスト)
2018年5月から1年間、毎日更新した連載『今日のもともと予報 ことばの風吹く』の中から、104句を厳選。
ソフトカバーつきのコデックス装で、本が開きやすく見開きのイラストページも堪能できます!
この記事を書いた人
yagimotoyasufuku
柳本々々(やぎもと・もともと)
1982年、新潟県生まれ 川柳作家 第57回現代詩手帖賞受賞
安福 望(やすふく・のぞみ)
1981年、兵庫県生まれ イラストレーター