誰かが来そう 白玉いれるのもいいね

電話の音がして、出たら友人で、「白玉とかでてくるよ!」と大きな声でわたしに言った。黒沢清さんの映画には白玉が大事な場面で出てくる。たべものがちゃんとでてくるよ。べつのゆうじんだったけれど、そのひとも黒沢清がすきだったんだな、と思った。そのひとはたぶんたべものから黒沢清の映画を観ていたんだとおもう。わたしとちがって。

さいきんずっと山頭火を読んでいる。「誰か来さうな雪がちらほら」という句があって、誰かが来そう、っていいなと思った。そうおもってここまで生きてきたのかも。みんな。これから。

電話を切って、また、誰かが来そう、とおもって、ねむった。


『バームクーヘンでわたしは眠った もともとの川柳日記』(春陽堂書店)柳本々々(句と文)・安福 望(イラスト)
2018年5月から1年間、毎日更新した連載『今日のもともと予報 ことばの風吹く』の中から、104句を厳選。
ソフトカバーつきのコデックス装で、本が開きやすく見開きのイラストページも堪能できます!
この記事を書いた人
yagimotoyasufuku
柳本々々(やぎもと・もともと)
1982年、新潟県生まれ 川柳作家 第57回現代詩手帖賞受賞
安福 望(やすふく・のぞみ)
1981年、兵庫県生まれ イラストレーター