たとえばおやすみに星をふりかけた

ちょうど私が高校をやすんでひきこもっていたころに気まぐれで電話してきた友達がいて私は「さいきん『総理と呼ばないで』を見ているよ」と話した。

「どうしてこんなに嫌われちゃったんだろう、ってよぞらを見上げながら田村正和がふっと言うところがよかったよ。こんなはずじゃなかった。今ではみんながわたしをきらってる。どうしてこんなことになっちゃったのか。よぞらには星があるのに」

本人はそんなつもりがなかったけれど、気がつくと後戻りできないところまできていることがある。ときどき助けてくれるひともいるが、わたしはたぶんこれからもっとしっぱいをする。さようならも、ありがとうもいえず、ひとり、もっと深いところに入っていく。

そういう場所にたまたまたどりついたときにひとはどうするんだろう。そんなことを思いながら『総理と呼ばないで』を見ていた。古畑任三郎の時と違って総理の田村正和は怒鳴り、怒っていた。蟹を食べ、ゴルフをし、何度も判断を間違え、椅子に深く腰掛け、悩み、聞き、改め、謝っていた。ごめんなさい、と。

才能やきらきらやぽんこつ、すなおさについて話し合ったあと、「まだ日曜だから」と友だちが言い、電話はきれた。


『バームクーヘンでわたしは眠った もともとの川柳日記』(春陽堂書店)柳本々々(句と文)・安福 望(イラスト)
2018年5月から1年間、毎日更新した連載『今日のもともと予報 ことばの風吹く』の中から、104句を厳選。
ソフトカバーつきのコデックス装で、本が開きやすく見開きのイラストページも堪能できます!
この記事を書いた人
yagimotoyasufuku
柳本々々(やぎもと・もともと)
1982年、新潟県生まれ 川柳作家 第57回現代詩手帖賞受賞
安福 望(やすふく・のぞみ)
1981年、兵庫県生まれ イラストレーター