春陽堂書店8月の新刊『「ワタシたちはガイジンじゃない!」日系ブラジル人「笑い」と「涙」30年の物語 』のご案内です。
「ワタシたちはガイジンじゃない!」
日本に「デカセギ」に来ていた、ある日系ブラジル人の男性が、公園のベンチで孤独死した事件をきっかけに取材を開始。150人以上の日系ブラジル人から聞き集めた日本での「笑って・泣けて・考えさせられる」30年の体験談を基に宮藤官九郎氏が脚本を執筆。イッセー尾形氏が日系ブラジル人の観客を前に一人芝居で演じた番組、「ワタシたちはガイジンじゃない!」。
2021年2月11日にNHK総合で放送し、放送人グランプリ2021優秀賞を受賞しました。
※当ドキュメンタリーはインターネットで配信中です。
本書籍は、宮藤官九郎さんによる一人芝居のシナリオと、日本で暮らす日系ブラジル人の貴重な体験談から構成。
体験談は「労働」「生活」「公衆電話」「リーマンショック」「困難を乗り越えて」の5章に分かれ、ブラジルでは「日本人」、日本では「ガイジン」と呼ばれた人々のまっすぐな声がぎっしり詰まった内容となっています。
以下、本書に掲載された、脚本を手掛けた宮藤官九郎、一人芝居に挑んだイッセー尾形両氏のメッセージの一部をご紹介。

最高のエンターテイナーと作り上げた作品  宮藤 官九郎
 
 コロナ禍での脚本作り、実はディレクターの川上さんとは一度しかお会いしていません。全てリモート。日系ブラジル人の方々への取材も、川上さんが団地を訪れ、東京にいる僕と回線で繫いでくれて、リモートで質問させて頂くというものでした。そこで聞いた話は、とても生々しく、切ないエピソードもあれば、つい笑っちゃうほっこりエピソードもあり、とても興味深かった。社交場でもある酒屋さんの前で発泡酒を飲みながら、スマホ越しに見ず知らずの脚本家である僕に日々の愚痴をこぼす。皆さんにとっても奇妙な体験だったと想像します。(本文より一部抜粋)


あの場でしかできなかった未体験のお芝居  イッセー尾形
 
 終わって思うことは、本当不思議な感じ。ここにいるんだけれど、この世界じゃないところに自分がいるんだなっていう、そういう舞台空間でしたね。初めてで新鮮です。
 いつもの自分の劇場だと、『イッセー尾形』の世界でお客さんが、反応してくれて、でも、ここは、自分は何を投げかけるのかよくわからないんですよ、台本はちゃんとあるけども、お客さんがどう反応するかわからない。でも、きっとお客さんも同じ感覚だったっていう実感がありました。彼らの抱えてきた人生の背景を感じてたっていうかねえ。反応は一つの表面だけれど、その向こうにどんなものがあるんだろうみたいな。
 最後までみんな、そんな表情をしてらっしゃいました。(本文より一部抜粋)

続きはぜひ書籍本編で!

【新刊】『「ワタシたちはガイジンじゃない!」日系ブラジル人「笑い」と「涙」30年の物語 』

プロフィール
《編纂》「ワタシたちはガイジンじゃない!」取材班
《脚本》宮藤 官九郎(くどう・かんくろう)

1970年生まれ、宮城県出身。1991年より大人計画に参加。
2001年に映画『GO』で第25回アカデミー賞最優秀脚本賞他多数の脚本賞を受賞。以降も、部隊『鈍獣』で第49回岸田國士戯曲賞、ドラマ『ゆとりですがなにか』で第67回芸術選奨文部科学大臣賞、映画監督デビュー作『真夜中の弥次さん喜多さん』で新藤兼人賞金賞、ドラマ『いだてん~東京オリムピック噺~』で第12回伊丹十三賞などを受賞。近年の脚本担当作品に、ドラマ『俺の家の話』、『いちげき』、『離婚しようよ』(大石静共同脚本)、『季節のない街』(企画/監督も)、映画『1秒先の彼』などがある。また、俳優としてもドラマ『すべて忘れてしまうから』、映画『イチケイのカラス』、『こんにちは、母さん』に出演するなど、幅広く活動する。

《一人芝居》イッセー尾形(いっせーおがた)
1952年に福岡県に生まれる。「一人芝居」の第一人者として独自のスタイルを1980年代に確立。1990年代には海外からも招致され、ニューヨーク、ベルリン、ミュンヘン他、数多くの都市で上演を果たす。夏目漱石の作品を題材にした『妄ソーセキ劇場』を公演。さらに映画、ドラマにも多数出演。硬軟織り交ぜた多彩な演技で観る者を魅了。2017年に出演した、マーチン・スコレッシ監督の映画『沈黙—サイレンス—』ではその演技が高く評価され、第42回ロサンゼルス映画批評家協会賞 j助演男優賞の次点に選ばれる。2021年にはアルチュール・アラリ監督の映画「ONODA-万夜を越えて」に出演。現在も現代人の日常を演じ続けている。