「いつもそこにいるひとがいないと眼はのこるとおもうよ」

いつもそこにいるひとがいなくなったら眼はのこるとおもう。眼は変化にたえられないとおもう。だって眼はまいにちみてたわけだから。

たとえばそのひとが部屋のきにいってすわるとこに毎日すわってたすがたを。 それがとつぜんいなくなったら眼はその変化にとつぜんはついていけないから、むしろまだ〈見る〉んじゃないか。そのひとがいなくなっても。もういないのに。眼はみようとする。そこにそのひとのすがたかたちを。

もしかしたら、霊ってそういうものじゃないかなとおもうことがある。眼が時の変化に追いつけなかったこと。眼がまだ過去にいたかったこと。眼が変化にたえきれなかったこと。

わたしたちはいつも眼だけをおいてくる。もういなくなったひとたちのために。

この記事を書いた人
yagimotoyasufuku
柳本々々(やぎもと・もともと)1982年、新潟県生まれ 川柳作家
安福 望(やすふく・のぞみ)1981年、兵庫県生まれ イラストレーター