おおきくなったりちいさくなったり、わるいことにおぼれたり

ときどきレイモンド・カーヴァーというひとを思いだしている。

たぶん、たべることが大好きで、おおきくなったりちいさくなったり、わるいことにおぼれたり、いいことにも、奇跡のようなことにもおぼれたひと。

かれは象のような背をまるめて、ソファーに吸い込まれるように内側に座り込みながら、「うんうんわかるわかる、そうだよね、人生ってハードなところがあるよ、うんうん」とうなずく。

「でもさ、いったいだれが・だれに・なにがおこるかなんてわかるんだろう。すごくふしぎなことなんだよね。だってそんなことふだん考えもしないでしょう。でも、きゅうにそれがやってくる。それがやってきたときには、もう、みんな、そのことの中心にいる。それってどういったらいいのかな。でもそれはわかっちゃうことなんだよね、そのときそこにいたひとびと、ひとりひとりが」

レイモンド・カーヴァーは短篇をたくさん書いた。こんなふうに言っている。

「さっさと片づける、ぐずぐずしない、次に進む」

そうしてチェーホフのこんなことばを愛した。

「やがて突然、すべての物事が彼の中で明確になった」

この記事を書いた人
yagimotoyasufuku
柳本々々(やぎもと・もともと)1982年、新潟県生まれ 川柳作家
安福 望(やすふく・のぞみ)1981年、兵庫県生まれ イラストレーター