鳩ばかり出してくるので別れます

美容室からでてきたひとが、さようなら、ありがとう、と美容師のひとに手をふっていて、生涯の別れなのかなあ、と思う(美容室から出るときわたしはさようならなんて言ったことがない)。

だとしたら、今、わたしは生涯の別れに立ち会ってるのかなあ、と思う。

逆に。わたしは今までどれくらいわたしの生涯の別れに〈立ち会われた〉のかなあ、とおもう。でもそれが生涯の別れなんてあとでわかった場合もあったしなあ。だから、ものすごく気軽に、鳩でもだすように、じゃあね、って言ったんだよなあ。

そのとき、誰かがわたしの別れを自転車とめて見てくれていたんだっけ。あのひとは、じゃあね、ってあんなに軽くいってるのに、ああこれは生涯の別れですね、って。

そういう自転車に乗った天使みたいなひとがいてみてる場合はある。ない。

この記事を書いた人
yagimotoyasufuku
柳本々々(やぎもと・もともと)1982年、新潟県生まれ 川柳作家
安福 望(やすふく・のぞみ)1981年、兵庫県生まれ イラストレーター