ブラジルの先住民の椅子を見る
からだはどれくらい昔のことを覚えているんだろう。
たとえば獲物を狩るために岩陰に隠れていた記憶をわたしはこのからだのどこかに残しているだろうか。
百年くらい時空を超えてだれかとうすくらがりで抱き合った記憶。戦いのなかでそこかしこにゆれる炎をみていた記憶。いま、たった今、歌や花や大勢のわたしをみおろす眼とともに埋葬されるんだ、という死につつあるからだの記憶。
そういう記憶をからだのどこかにもっていないだろうか。
そういえばわたしはかつてそういう名前で呼ばれていた、と。毛が密生し、かがむように歩き、がっしりしたからだをしていた、と。泣くように吠えるように歌った、と。