あなたの脳のきらきらにしたがって

わたしの前でいっしょうけんめい話しているあなたをみて、いま、あなたの脳きらきらしてるんだろうなあ、とおもうことがある。あなたが今わたしに話している話はちょっとおいておいて。脳きらきらしてるなあ、と。そして、その脳のきらきらにあわせて、あなたからことばを今うけとりながら、意味だったり、意味じゃない場所だったりをことばの狐を狩る猟師のようにうろうろしてるわたしも今脳がきらきらしてるだろうなあ、と。脳をきらきらさせあって、話し合ってる。

でも、もちろん、そんなことはいわない。そんなことを言ってしまったらきらきらがきえてしまいかねないから、うんうん、そうだね、そうおもう、そうかんがえたことがぼくにもありました、うんうん、いやごめんすこしいいかんじでねむってた、きもちの森みたいなとこで、うんうん、なるほどね、ありがとう、なんか感謝したくなって、うんうん、ぼくはちがうふうにおもってたけど、いまおなじところにたどりついたかんじも、そうか、そうだね、そうおもう、いろんなことばを脳がきらきらするきのむくままにあなたに投げかけた。ここ、から。

「あなた、猟師みたいなかっこうでどうしたの?」といわれたことがあったっけ。あの3月のときに。たくさんのふくろをかかえて。あかるいふくろもくらいふくろも。ファーに巻かれて。マスクして。長い髪で。あのときから、いまこのときのきらきらまでの距離。ここまでこられてほんとよかったよ。のここについてわたしも話しはじめる。

この記事を書いた人
yagimotoyasufuku
柳本々々(やぎもと・もともと)1982年、新潟県生まれ 川柳作家
安福 望(やすふく・のぞみ)1981年、兵庫県生まれ イラストレーター