「あなた、この星にはじめておりたひとみたいね」

朝の四時くらいにデニーズにいると、四人くらいのひとが店内のあちこちに点在している。

中にはくちをあけたままねむっているひともいる。夜空と交信しているみたいに、天高く顔を上へ上へと向けている。でもそれが宇宙通信でないなんていったいだれにわかるのか。

中にはなみなみグラスにクリームソーダをそそぎ、それをひたすらこぼしながら歩いているひともいる。はじめてこの星にやってきたひとなのかもしれない。だから、緑のソーダを選んだのかもしれないし。

ただわたしもはじめてこの星にきたひとのように四時くらいはあるいている。ほとんどすれちがうひともいない街。ゾンビ映画でよくみるような街の風景。ときどきひととすれちがうと少しどきどきする。森からでてきてはじめて人間と会ったときみたいに。

「あなた、この星にはじめておりたひとみたいね」と言われたことがあった。そう言われたときわたしは、あっちこっち動くストローをくちびるでつかまえるのにひっしだった。みずびたしだった。

この記事を書いた人
yagimotoyasufuku
柳本々々(やぎもと・もともと)1982年、新潟県生まれ 川柳作家
安福 望(やすふく・のぞみ)1981年、兵庫県生まれ イラストレーター