「星とりなよ」と怒られる

これはいい? ときくと、
まあそれはいい、というので
ひろって、かごにいれる。

かご、どうしたの、ときみがいうので、
ひろったんだ、とこたえる。
星のふる丘で。

「星のふる丘で」はうそをついている。
うそをつかないでねおねがいだから、
ときみからいわれる。

これもひろっちゃっていいかな? ときくと、
まあいいかなそれも、というので
ひろってコートのポケットにいれる。

まさかそのトレンチもひろったんじゃないでしょう?
ときかれたので、
ある日森のなかで、
とわたしはこたえる。

「ある日森のなかで」がうそで、
おねがいだからうそはつかないでねはやくかえってきてね、というきみのことばをおもいだす。

こんなんはどうだろう、ふやふやしてるひかるもの
とわたしはきみにきく。

どうかな、ときみがいう。

わたしは、またうそをつきそうになる。

うそはつきたくなかったから、わたしは、

星ひろう。なんでもひろわないでねときみにいわれる。「はい」とこたえる。

この記事を書いた人
yagimotoyasufuku
柳本々々(やぎもと・もともと)1982年、新潟県生まれ 川柳作家
安福 望(やすふく・のぞみ)1981年、兵庫県生まれ イラストレーター