はしってきえようとしてるときに花にきづいて立ち止まる

宮崎駿さんのアニメ『となりのトトロ』に出てくる小トトロが走って消えるシーンがあるのだが、走って消えゆくときに、小トトロはどうも花に気づいて、花にびっくりして、花をあらためてよく見ながら、走って、消えようとしているらしい。

小トトロのコマ撮りコレクションというフィギュアをみていてそれを知った。

からだはもうほとんど消えかけているのに、今、そこに花があった。わたしはもう消えようとしているのに、花のおかげで、わたしがまだこちらの世界に帰ってきてしまう。むこうにいこうとしていたそのせつな、今ここにある花にひっぱられてしまう。ぜんぶ、あなたのせいで。

そういう花はいいなとおもった。わたしも消えつつあるときにそこに花があったらいい。わたしは驚いて、でも消えつつあって、でも花を見ていて、消えてゆく。いろんなひとがいろんな時間の流れのなかでそうしてきたように。

この記事を書いた人
yagimotoyasufuku
柳本々々(やぎもと・もともと)1982年、新潟県生まれ 川柳作家
安福 望(やすふく・のぞみ)1981年、兵庫県生まれ イラストレーター