外は風が強い詩

最終回ばかり集めたマンガのアンソロジーがあっていいなあとおもった。

ぜんぶ、はじまりがおわりなのがいい。はじめての出会いが別れなのがいい。

最終回のドラマやアニメやマンガにでてくるひとたちってちょっと特別なかんじがでていていい。

歌集や句集というのもそれにちょっと似ている。はじまったら一首や一句ですぐにおわってしまう。だから歌集や句集を最終回アンソロジーと呼んじゃってもいいのではないか。

ほんとうは日々いろんな小さな最終回があるんだとおもう。たとえば実はもう一生会わないひととのなにげない会話。ぼくもね、むかし猫飼ってたんですよ。ただその猫、恋人の猫だったんです。だから会えなくなってしまった。でもその猫、ぼくの名前がついてて。それってどうおもいます? ぼくはそこにいないのに、ぼくは猫としてそこにいる。どうなってるんです? 会話はつづく。でもそのひとにはもう一生会わないから最終回のテロップが下のほうにでている。どうおもいます? そうねえ。そのひともわたしにもう一生会うこともなさそうなので、わりとてきとうに聞いている。まあいいんじゃないの。いいんですかそういうことも。うん、いいよ。いいのかあ。いいのよ。なかみのない会話。なかみのない最終回。星がでている。最終回の星。チョコでもたべたらとそのひとがくれるチョコ。最終回のチョコ。いいことあるのかなあこれから。最終回の問いかけ。ほんとにちゃんとした終わりくんですかこれ。最終回のちゅうちょ。いや、最終回へのちゅうちょ。でも。

ともかく終点までは行こう。

この記事を書いた人
yagimotoyasufuku
柳本々々(やぎもと・もともと)1982年、新潟県生まれ 川柳作家
安福 望(やすふく・のぞみ)1981年、兵庫県生まれ イラストレーター