しぬまで部屋のすみっこにある「おはようございます」

早朝の郵便局の24時間窓口にいる映画『ディア・ハンター』のジョン・カザールのようなおじさんにあたまをさげて速達をわたす。おじさんがゆっくりと「おはようございます」と言ってくれる。わたしもゆっくりと「おはようございます」と言った。

早朝はゆっくりとながくこころをこめて「おはようございます」と言える時間なのかもしれない。森で鹿をさがすように「おはようございます」とさいごまでいえる。「おはようございます」にはたっぷりとした時間と心の準備がひつようとされる。はじめて鹿を撃つように。「お」から「す」までの長さをわたしたちははじめての森のように歩く。

この記事を書いた人
yagimotoyasufuku
柳本々々(やぎもと・もともと)1982年、新潟県生まれ 川柳作家
安福 望(やすふく・のぞみ)1981年、兵庫県生まれ イラストレーター