火を放ついろんな愛を知ったあと
電車を待っていたら、なんかいろんな愛があるなあ、ときゅうにわたしに言ったひとがいて、たしかにこの世界にはいろんな愛があるよなあとおもった。
雑な愛も、ずさんな愛も、やっつけの愛も、かんたんな愛も、むずかしい愛も、あたまからつまさきまでとびきり価値のある愛も、水のように流れていく愛も、つかのまの愛も、愛にむかない愛も、乱暴な愛も、おたがいほろびあいながらの愛もある。
たしかになあ、いろんな愛があるよなあ、とおもう。
電車がくる。決まった時間よりはやく。わたしはあたまをさげて乗り込む。あいてもあたまをさげる。いつもの暮らし。