火を放ついろんな愛を知ったあと

電車を待っていたら、なんかいろんな愛があるなあ、ときゅうにわたしに言ったひとがいて、たしかにこの世界にはいろんな愛があるよなあとおもった。

雑な愛も、ずさんな愛も、やっつけの愛も、かんたんな愛も、むずかしい愛も、あたまからつまさきまでとびきり価値のある愛も、水のように流れていく愛も、つかのまの愛も、愛にむかない愛も、乱暴な愛も、おたがいほろびあいながらの愛もある。

たしかになあ、いろんな愛があるよなあ、とおもう。

電車がくる。決まった時間よりはやく。わたしはあたまをさげて乗り込む。あいてもあたまをさげる。いつもの暮らし。

この記事を書いた人
yagimotoyasufuku
柳本々々(やぎもと・もともと)1982年、新潟県生まれ 川柳作家
安福 望(やすふく・のぞみ)1981年、兵庫県生まれ イラストレーター