ムーンライトは月光 書くこととねむるだけの日々
本屋さんてこわいよなあとおもうことがある。幼いころから本屋がこわかった。たくさん本があって、おまえは生涯ぜんぶを生きてもこの本たちを読み切れないでしょと言われているようなきがして。
本屋さんで待ち合わせしよう、と言われて、「いや、こわくてだめだよ」と言ったことがある。「遊園地とかはどうだろ。観覧車とか」「なんで待ち合わせのために遠くにおもむかなきゃなんないの」
図書館もこわいところだ。わたしの通っていた大学は地下三階くらいまであってとってもこわかった。おそるおそるおりていくと女の子のともだちがいて「こんなところで会えるなんてね」と言った。かのじょはコピーをとっていた。コピー機がかのじょが時間をかけて打ち込んだ文章をがあがあ吐き出していく。「やぎもとくん、こんなところで会えるなんてね」「うん」「きっとまたあとでもそうおもうね。こんなところで会えるなんてね、って」「うん」
緑のひかりがかのじょをいっしゅん照らし出しては消えていく。こわいところだとおもう。