隠しきれなくなった手をみせてもらう

ともだちから結婚報告を受けた日、わたしは図書館でほんを読んでいた。『海底二万里』を。それからひとから、あまりに素直すぎるということで怒られもした。どうしてあんな素直な受け答えするんです! もっとあんたいつわりなさいよ、と。それからともだちに電話をかけた。「わたしね、妹とおおきな家を建てて、いもうととくらすのよ、そこでずうっと」とともだちは言った。「うん、うん、そうだね」とわたしは言った。それからわたしは『アンダーテール』というゲームをクリアした。「あなたに会えてとてもうれしいよ。きょうはいい日だね。おちゃはいかが」とおおきな敵が花に水をやりながら言うゲームを。あたりいちめん金色の花が植えてある。ていねいに育てられた花たちが。「ぼくだってこわいんだ。でもはいしゃにいくんだっておもえばいい」

この記事を書いた人
yagimotoyasufuku
柳本々々(やぎもと・もともと)1982年、新潟県生まれ 川柳作家
安福 望(やすふく・のぞみ)1981年、兵庫県生まれ イラストレーター