連絡帳にふたりのことをまっ先に書く

『hibi』という句集を出した八上桐子さんの句に、

  二人乗りの舟ってふつうにこわいね  八上桐子(『川柳ねじまき』第4号)

という句がある。なんだろう。愛の句のようにもおもえるし、家族の句のようにもおもえる。ひとりだったはずなのに、いつのまにか〈ふたり〉になってしまうこわさ。それをしてしまったらわたしたちふたりになってしまうんだぞ、というきょうふ。もうもとにもどれないんだぞというふたり。でもそのこわさが「ふつう」にうめこまれている日常。

ふたりという存在は時限爆弾みたいだ。世界のあちこちにふたりになるための罠がしかけられている。そしてふたりはこんどは家族になってゆく。いつのまにかきづくとひとがふえている。

この記事を書いた人
yagimotoyasufuku
柳本々々(やぎもと・もともと)1982年、新潟県生まれ 川柳作家
安福 望(やすふく・のぞみ)1981年、兵庫県生まれ イラストレーター