白すぎて耳かどうかもわからない

むかしとてもなかのよかったひとがすごく白くて、よく、雪のなかにいるとわたしは見えなくなるんだよ、と言っていた。それはないでしょう、と思ったが、じっさい、それはなかった。そんなメルヘンなひとなのに、蹴られそうになるほど怒らせたことがあった。かのじょの顔がこおりつき、足にエネルギーをためているのがわかった。これからわたしを蹴るんだ、とわたしはおもった。すんでのところで蹴られなかったけれど。

この記事を書いた人
yagimotoyasufuku
柳本々々(やぎもと・もともと)1982年、新潟県生まれ 川柳作家
安福 望(やすふく・のぞみ)1981年、兵庫県生まれ イラストレーター