週刊もともと予報
－ことばの風吹く－ ／ 7月24日

本棚にずっと答えがあるとかさ

なんかをしたい、これをしたい、これをやりぬきたい、やりとげたい、じゃなくて、なんもしないことの大切さを喜ぶことができないだろうか。ああきょうはなんもしないでいることができた、よかった、なんもしないじぶんでいられた、あしたにつながった。誰とも会わずにすんだ、話さずすんだ、うらまずすんだ、よかった。あしたあえるから。

内田百閒は厭になるまで寝尽くすことの大切さを説いた。なんかあったらもうねてろ、と。こころがなんかを起こしそうなときはねてろ。なんもなくてもねてろ。果報はそのうちきっと必ずやってくるから。あなたのてをひっぱりに誰かがやってくるから。

きょう、なんにもできなかったことを、喜びたい。

『バームクーヘンでわたしは眠った　もともとの川柳日記』（春陽堂書店）柳本々々(句と文)・安福　望(イラスト)

2018年5月から1年間、毎日更新した連載『今日のもともと予報　ことばの風吹く』の中から、104句を厳選。
ソフトカバーつきのコデックス装で、本が開きやすく見開きのイラストページも堪能できます！