週刊もともと予報
－ことばの風吹く－ ／ 10月16日

どこにいたって寿司なんだから

現代川柳って、どこにもいきたくない、わたしはここにいたい、っていう文芸なのかなあとおもうことがある。

暮田真名さんの『補遺』には寿司をめぐる連作があるが、ずっと寿司について書かれている。

　　弟的な寿司なのかなあ　　暮田真名（『補遺』）

いろんな寿司をめぐる状況がつづく。世界は寿司と交換されつづける。ふつう、ひとは、どこか遠くへ行きたい、とおもうはずなのに、現代川柳は、なぜか、〈寿司プレース〉といったような寿司の場所にうずくまろうとする。

川柳ってなんだろうとよくおもう。柄井川柳というひとの人名がそのままジャンルになってしまったふしぎな文芸。短歌は、歌。俳句は、句。川柳は、人名。太郎。花子。

世界最後の日にどこにいたいですか？　どこにもいきたくない、わたしはここにいたい。

『バームクーヘンでわたしは眠った　もともとの川柳日記』（春陽堂書店）柳本々々(句と文)・安福　望(イラスト)

2018年5月から1年間、毎日更新した連載『今日のもともと予報　ことばの風吹く』の中から、104句を厳選。
ソフトカバーつきのコデックス装で、本が開きやすく見開きのイラストページも堪能できます！