遠い戦争星いっぱいのシャツをぬぐ

ぼたんをいじってたら、ぼたんがとれてしまって、釦つけられないのに、とおもう。

クリーニング屋さんでつけてもらったけれど、一週間後にとりにいくと、申し訳なさそうな顔で、まちがったぼたんをつけてしまいました、と言われる。いいですよ、とわたしはいったが、二個もまちがってしまいました、と言われる。いいですよ、とわたしはいう。

それから人に会って、ぼたんきになる? 二個ちがうんだよ、というと、これからしばらくずっと釦の話をきかなきゃならないの? と言われる。それよりなんか襟んとこタグがついてるんだけど? え?

やさしさが、とびかっている。


『バームクーヘンでわたしは眠った もともとの川柳日記』(春陽堂書店)柳本々々(句と文)・安福 望(イラスト)
2018年5月から1年間、毎日更新した連載『今日のもともと予報 ことばの風吹く』の中から、104句を厳選。
ソフトカバーつきのコデックス装で、本が開きやすく見開きのイラストページも堪能できます!
この記事を書いた人
yagimotoyasufuku
柳本々々(やぎもと・もともと)
 1982年、新潟県生まれ 川柳作家 第57回現代詩手帖賞受賞
安福 望(やすふく・のぞみ)
 1981年、兵庫県生まれ イラストレーター