まわり道ずっとベッドのうえではなす

新しい年になっても、ずっとよこになっていたときに、映画『おとなの恋は、まわり道』を観た。

変人で、偏屈で、愛に対して不信をいだいているそれぞれ独身の、キアヌ・リーヴスとウィノナ・ライダーがたまたま出会い、たまたまけんかし、たまたまおなじベッドのうえでねむる話で、この映画は、ふたり以外は話さず、ずっとふたりだけが、ふたりだけで話して、終わる。そのなかで、ひとの愛に関することについて話し合い、じぶんたちの愛に関することについても話し合う。ベッドのうえで、チョコレートを食べ、お酒を飲み、もうずっと忘れていた腕まくらを練習し、テレビをみて、またあいにかんする話し合いをする。ふたりはお互いの顔のラインについても話し合う。ちょうどいいかも、と。世界はそのあいだもずっと動いていて、ひとが野外で美しい結婚式をあげ、動物たちがこうげんで寝そべったりしている。

愛のまわり道のような映画を見終わって、またよこになっていた。1月ってよこになってることがおおいよなあとかおもう。まちをあるいていると、1月はとてもしあわせそうなひとをなんどかみかける。テレビのなかにも天気予報の中継で風に吹かれながらもしあわせそうなひとがうつっていた。奇跡や大失敗が毎晩地球上のあちこちで起きて、愛が生まれたり、生まれ損ねたりしているのは、みんな、しってる。


『バームクーヘンでわたしは眠った もともとの川柳日記』(春陽堂書店)柳本々々(句と文)・安福 望(イラスト)
2018年5月から1年間、毎日更新した連載『今日のもともと予報 ことばの風吹く』の中から、104句を厳選。
ソフトカバーつきのコデックス装で、本が開きやすく見開きのイラストページも堪能できます!
この記事を書いた人
yagimotoyasufuku
柳本々々(やぎもと・もともと)
 1982年、新潟県生まれ 川柳作家 第57回現代詩手帖賞受賞
安福 望(やすふく・のぞみ)
 1981年、兵庫県生まれ イラストレーター