春のまんなかはここ 猫から始めよう

こないだ、雑貨屋さんをぶらぶらしてて、あなたがわたしをスーパーハッピーにしてくれる、という絵はがきをなんとなくみたりしていた。スーパーハッピー、いいね。店をでてとびらをしめるしゅんかんに、店のおねえさんが、「いってらっしゃいませ。よいいちにちでありますように」というのが聞こえた。とびらがしまって、こえもとぎれた。びっくりした。そんなこと、たぶん、(今ひっしに思い出しているが)、じんせいでいわれたことははじめてだったので、つまり、びっくりした。誰かにすぐに伝えたくなったけれど、あんまりすぐにつたえないでおこう、しばらくじぶんのこころでそのことばをくるくるまわしておこうとおもって、近くのGUでうろうろしながら、ドラえもんのトートバッグを買った。いつかは、いうだろう。こんなこといわれたよ、と。世界が春にちかづいていくときに、すてきなことをいわれたよ、と。でもどうか、そのときがそんなに特別なしゅんかんじゃなく、ごくふつうのせかいのごくふつうのしゅんかんでありますように。


『バームクーヘンでわたしは眠った もともとの川柳日記』(春陽堂書店)柳本々々(句と文)・安福 望(イラスト)
2018年5月から1年間、毎日更新した連載『今日のもともと予報 ことばの風吹く』の中から、104句を厳選。
ソフトカバーつきのコデックス装で、本が開きやすく見開きのイラストページも堪能できます!
この記事を書いた人
yagimotoyasufuku
柳本々々(やぎもと・もともと)
1982年、新潟県生まれ 川柳作家 第57回現代詩手帖賞受賞
安福 望(やすふく・のぞみ)
1981年、兵庫県生まれ イラストレーター