花火ぽんぽんけむたいけむりよりねむり

掃除をしていたら、十年日記を見つけた。2012年に買ったものなので2021年までまだいちねんもある。八年前のきょうをみたら、「ねむたくてしかたなくてちからなく横になっていた」とかかれていた。つけたすように「花火の音も」と。

次の日に「はこばれている。」と書かれていた。よく眠ったからはこばれたのか、運命がうごきだしたのかはわからない。そして「 また、花火」と書かれている。
   
むかし、川柳作家の時実新子さんの直筆はがきを見せてもらったことがある。会えるときに会えるのよ。待ちましょう。というようなことがぱっと書いてあった。おぼえとこ、とわたしは思った。

わたしにとって待ったり会ったりすることは、いつも、ちからなくねむりながらあなたのところまで運ばれてゆくことだったようなきがする。ねむることのなかに待つことや会うことがふくまれている。こどものころのふろく、みたいに。


『バームクーヘンでわたしは眠った もともとの川柳日記』(春陽堂書店)柳本々々(句と文)・安福 望(イラスト)
2018年5月から1年間、毎日更新した連載『今日のもともと予報 ことばの風吹く』の中から、104句を厳選。
ソフトカバーつきのコデックス装で、本が開きやすく見開きのイラストページも堪能できます!
この記事を書いた人
yagimotoyasufuku
柳本々々(やぎもと・もともと)
1982年、新潟県生まれ 川柳作家 第57回現代詩手帖賞受賞
安福 望(やすふく・のぞみ)
1981年、兵庫県生まれ イラストレーター