『銀河鉄道の夜』にも出てきたふとん

夜中に電話が来て、まず狐らしいものの話をしてくれた。

「天井になにかいるんだよ」「よなかにうごきだすんだよ」「どうしたらいいかなやんでる」

それから次にふとんの話を。

「夜にたんぼのまんなかにふとん屋をみてね、ふとんありますってネオンが照らされてて、犬の散歩をしてたんだけれど、しかも直売所があってね、そこでふとんを売っているのよ。おどろくとかじゃなくて、なんかなっとくしてしまって」

「ふとんって、ファンタジーだよね」と私は電話越しに言った。「そう、おもってる」

「それはちがう。調べたらサイトもあるの。ちゃんとしたつくりの。そこからいろんなところにふとんを運んでいる。夜を越して待っているひとたちがしっかりした重さのあるふとんをちゃんと配達員のひとからドアをあけて受け取っている、きもちわかる?」

それから、どんどんまた、狐っぽい話に。

「狐らしきものみたんだよ」「猫よりはやかった」


『バームクーヘンでわたしは眠った もともとの川柳日記』(春陽堂書店)柳本々々(句と文)・安福 望(イラスト)
2018年5月から1年間、毎日更新した連載『今日のもともと予報 ことばの風吹く』の中から、104句を厳選。
ソフトカバーつきのコデックス装で、本が開きやすく見開きのイラストページも堪能できます!
この記事を書いた人
yagimotoyasufuku
柳本々々(やぎもと・もともと)
1982年、新潟県生まれ 川柳作家 第57回現代詩手帖賞受賞
安福 望(やすふく・のぞみ)
1981年、兵庫県生まれ イラストレーター