花火的冷やし中華にある永遠

そうしたくて、冷やし中華を食べにいった。

冷やし中華、ってなんだろう。それはびみょうな感じをたもちながらきらきらしている。ぐちゃぐちゃだが、星の勢いよりもきまぐれにたまたまこういうかたちになっている。

わたしはひとと冷やし中華をたべている。そばやさん、で。

冷やし中華は女の子の顔にときどきくっついていない。「男のひとにはわからないものよ」と言われたときがあった、冷やし中華について、「どうして」とわたしは言った、その日もわたしははやめに眠った、睡眠と冷やし中華。

冷やし中華は童話にはでてこない。だから赤ずきんは冷やし中華を知らない。歴史のあとのほうでひとがつくったもので、狼やピラミッドなんかとは関係がない。ハーメルンの笛吹きも冷やし中華に向けてはなにもしなかった。

そうこころにきめれば、ずっと冷やし中華をわたしは見ていられると、思う。

冷やし中華、ってなんだろう、とおもう。好きなひととそういうことについて話し合わないまま、ここまできてしまった。


『バームクーヘンでわたしは眠った もともとの川柳日記』(春陽堂書店)柳本々々(句と文)・安福 望(イラスト)
2018年5月から1年間、毎日更新した連載『今日のもともと予報 ことばの風吹く』の中から、104句を厳選。
ソフトカバーつきのコデックス装で、本が開きやすく見開きのイラストページも堪能できます!
この記事を書いた人
yagimotoyasufuku
柳本々々(やぎもと・もともと)
1982年、新潟県生まれ 川柳作家 第57回現代詩手帖賞受賞
安福 望(やすふく・のぞみ)
1981年、兵庫県生まれ イラストレーター