ごめんなさいここにかみさまはいません

川合大祐さんの句集『リバー・ワールド』を読んでいたら、ふっと、カート・ヴォネガット・ジュニアの次の一節を思い出した。

  それは、神さーーとあたりまえの答えを何回かしてみたことがある。  
  カート・ヴォネガット・ジュニア『猫のゆりかご』

それは、神がしたことなんだよ、とかんたんに答えてしまえばいいこと。でもその返事にはどこまでいってもたどりつけないことをしっていること。バスに遅れたのも、手紙の返事が来なかったのも、わたしがあのときうなずかなかったのも、それは神がそうしたことなんだよ、と返事をしようとおもえばできること。でもできなかったこと。

神のちかくととおく。できることとできないことのあいだにある今日。

ケーキがあるときくちにはいって、この世界からきえて、そういうあたりまえに近づいたのに、それは神だよ、といえないわたしがいつもいること。

  のりたまを幾たび振って対岸へ  川合大祐(『リバー・ワールド』)


『バームクーヘンでわたしは眠った もともとの川柳日記』(春陽堂書店)柳本々々(句と文)・安福 望(イラスト)
2018年5月から1年間、毎日更新した連載『今日のもともと予報 ことばの風吹く』の中から、104句を厳選。
ソフトカバーつきのコデックス装で、本が開きやすく見開きのイラストページも堪能できます!
この記事を書いた人
yagimotoyasufuku
柳本々々(やぎもと・もともと)
1982年、新潟県生まれ 川柳作家 第57回現代詩手帖賞受賞
安福 望(やすふく・のぞみ)
1981年、兵庫県生まれ イラストレーター