「2021年のおでんってめちゃくちゃ近未来のおでんだね」

「この、神野紗希さんの『コンビニのおでんが好きで星きれい』っていう句の『で』っていうのがとても不思議に感じられるんだよね。この『で』があることで、コンビニもおでんも星もそれらをくるみこむすべての宇宙も肯定しちゃうような。いろんなものが、で、で、ってつづいてゆく。もっというと、それらの中に、ぽつんと点としてあるわたしもフローな宇宙の流れとしてつづいてゆく。たまたま広大な宇宙の帰り道のわたしの肯定のような句なのかもしれない。帰ってゆくわたしのおでんサイズのイエス」

「おでん食べたいの?」

「宇宙における、おでん、なんだよ、きっと。モノリスの石板と共に、○や△や□として漂っているおでんというか。でも、人生はつづいていくんだよ。宇宙のただよいとは別に、きょうも、で、でね。いろんなことがあるけれど、意思とは無関係に、いろんなひとと出あって、わかれるんだけれど、で、でつないでいかなければならない。で、ってきっと、わすれて、でも、やっていくってことだから。おでんとかよろこびとかなしみとか、会えたとか」

「おなかすいたね」


『バームクーヘンでわたしは眠った もともとの川柳日記』(春陽堂書店)柳本々々(句と文)・安福 望(イラスト)
2018年5月から1年間、毎日更新した連載『今日のもともと予報 ことばの風吹く』の中から、104句を厳選。
ソフトカバーつきのコデックス装で、本が開きやすく見開きのイラストページも堪能できます!
この記事を書いた人
yagimotoyasufuku
柳本々々(やぎもと・もともと)
1982年、新潟県生まれ 川柳作家 第57回現代詩手帖賞受賞
安福 望(やすふく・のぞみ)
1981年、兵庫県生まれ イラストレーター