華道家として、日本だけでなく世界でも活躍する假屋崎省吾先生。昨年、華道歴35周年を迎えた先生のこれまでのいけばな作品を1冊にまとめた、愛蔵版写真集が刊行となりました。完成間もない2月上旬、弊社におこしいただき、春陽堂書店公式オンラインストアで書籍を購入された方限定のサインを入れていただきました。その数なんと300冊! 一気呵成にサインを入れていただいたあとで、本書の魅力について、また、これまでの・これからの華道家としての「花の道」についてお話をお聞きしました。


サイン入れを終えて
── 本日は書籍にサインを書いていただきましたこと、ありがとうございました。サインを入れていただきながら、あらためて本の中も見ていただけたと思います。完成した『假屋崎省吾 花の道』の感想をお聞かせください。
假屋崎 なんとか300冊へのサインを終えました(笑)。完成した書籍を拝見しましたけれども、本当に美しい本になったと思っています。いけばなの写真撮影も各所でしてくださいましたし、何度も何度も打ち合わせを重ねて、色校正も何度もやって、やっと完成しました。この本に関わってくださった皆様の、妥協を許さない熱心さのおかげで、ここまでたどりつけたと思っています。本当に美しい本に仕上がりました。

本全体が、真っ赤なデザインで統一されています。函のデザインも綺麗ですし、本のタイトルも金の箔押しになっていて、このキラキラ感がなんとも贅沢な仕上がりですね。
付録に掲載しているのは、2017年に三越日本橋で開催した「華道歴35周年 假屋崎省吾の世界展」でいけた作品です。実物は何十メートルもあった作品でしたけれども、それが1枚の屏風のように仕立てられています。
最後の年譜には、自分でも忘れていたようなことまで載っています(笑)。生まれた頃から、学生の頃、仕事を始めた頃……。最後のページまで、私の60年の人生すべてが凝縮されている作品集になりました。
ひとりでも多くの方に届いて、楽しんでいただけたら嬉しいですね。私も毎日、手に取って見ています。

假屋崎省吾の花の道
── あらためて、この本にまとめられた作品、これまでの35年間に残してきた作品を見て、どんな思いをいだかれていますか?
假屋崎 小さいころから花が大好きでした。両親のおかげでこうやって「花の道」に入れたということもあります。あと、小さいころから歴史的な建築物が大好きでした。いま、ご縁があって、そういった場所でも展覧会をやらせてもらえるようになったのが嬉しいです。
たとえば、徳島県美馬(みま)市で毎年開催している「うだつをいける」という展覧会は、もう12年もやらせていただいているんです。2018年に展示した作品が「Ⅰ 創造の花宇宙」に掲載されています。
ほかにも島根県松江市の大根島(だいこんじま)にある日本庭園「由志園」で展示した作品の写真もあります。ここはね、1年中牡丹の花を咲かせることができる、世界で唯一の場所です。日本庭園なので、普通は自然を前面に押し出すようなイメージがされる場所だと思いますが、個展のときには、色を前面に押し出した不思議な空間をつくりました。ちょうど昨年は、作品を搬入した日が大雪になってしまい、この作品は夜の7時ぐらいにライトで光をあてながら、4メートルほどの木を300本ぐらい使って制作しました。その晩も雪が降り続けたので、翌日撮影をする際には、このように雪が積もっていたんです。翌日は天気が良かったので、このように綺麗な写真に仕上がりました。

ほかにも、名古屋城の本丸御殿や、日本橋の三越での展覧会の写真もあります。普通ではありえないような色彩で、自然の色でも、とても鮮やかで美しい、夢のような世界です。そんな作品を、本をご覧になった方にも楽しんでいただきたいと思っております。
── 過去の作品も多く掲載していますが、とくに思い入れのある作品はありますか?
假屋崎 本書の「Ⅲ 花と生きる」に掲載されている土をつかった作品は、いけばなを始めていろいろなアーティストの方と交流を持つようになり、「自分も何かやりたい」と思い制作したものです。この作品をつくったのは、時給350円でアルバイトをしていた頃。花の根源は「土」です。土がすべてを生み出しています。この作品から「花の道」がはじまりました。
── いけばなというよりは、空間デザインのような作品だと思いました。
假屋崎 この頃からデザインというものが好きでした。いまは着物のブランドも持っていますし、スカーフやジュエリーのブランド、珍しいものだと棺桶や骨壺のデザインもしています。花から始まって、さまざまなものをデザインする仕事につながっています。それらすべてが、假屋崎省吾の作品なんです。
花っていうのは、どんどん咲いて、どんどん枯れてしまいます。なので作品は過去のものになっていきます。それがこうやって写真として、本として残るというのは、とてもありがたいことです。華道家冥利につきますね。
『假屋崎省吾 花の道』刊行記念 假屋崎省吾先生インタビュー【後編】へつづく
 假屋崎 省吾(かりやざき・しょうご)
華道家。Kariyazaki Flower Professional Education School 主宰。
美輪明宏氏より「美をつむぎ出す手を持つ人」と評され、日本はもとより世界各地で個展やイベントを開催。花と音楽、花とファッションのコラボレーションイベント、着物やガラス花器、ジュエリー、スカーフ、アーティフィシャルフラワー、棺、骨壷などのデザインおよびプロデュースをはじめ、花と建物のコラボレートとなる個展〝歴史的建築物に挑む″シリーズも展開。近年は“花育”をはじめとする社会貢献活動にも積極的に取り組んでいる。現在、TBS「中居正広の金曜日のスマイルたちへ」、MBS「プレバト!!」の大人気企画、いけばな才能査定ランキングなどの番組に出演し、様々な分野で幅広く活躍している。


『假屋崎省吾 花の道』(春陽堂書店)假屋崎省吾・著

假屋崎省吾の華道歴35周年を記念しての愛蔵版写真集。華麗なる美の世界をフルカラーで堪能!近年のダイナミックな作品群・多彩な素材と豊かな色彩を究めた“いけばな”の作品群・35年の華道歴の原点と、ターニングポイントとして刻まれた作品群をクロニクルに紹介。特別付録「華道歴35周年 華寿記念 假屋崎省吾の世界」は、A4サイズ×5面(長さおよそ1m)の屏風型。 圧巻のパノラマワイドサイズで、詳細に作品を堪能することができ、インテリアとして飾ることも可能。裏面には假屋崎省吾の写真と言葉も掲載。
この記事を書いた人
春陽堂書店編集部
「もっと知的に もっと自由に」をコンセプトに、
春陽堂書店ならではの視点で情報を発信してまいります。