華道家として、日本だけでなく世界でも活躍する假屋崎省吾先生。昨年、華道歴35周年を迎えた先生のこれまでのいけばな作品を1冊にまとめた、愛蔵版写真集が刊行となりました。完成間もない2月上旬、弊社におこしいただき、春陽堂書店公式オンラインストアで書籍を購入された方限定のサインを入れていただきました。その数なんと300冊! 一気呵成にサインを入れていただいたあとで、本書の魅力について、また、これまでの・これからの華道家としての「花の道」についてお話をお聞きしました。
本文末に、写真集『花の道』について先生ご自身が語る素敵な映像もございます。是非、最後までご覧ください。

これまでの10年を振り返って
── 25周年の時にも一度本を出されていますが、それから10年が経ち、何が大きく変わりましたか?
假屋崎 この10年の間、海外でも仕事をしていますし、作品の幅っていうのか、花というものの可能性が、どんどん広がっていると実感しています。いまは、軽井沢に建てる自分の別荘を手掛けることにエネルギーを注いでいます。建築家の方とやり取りをしながら、どこにもない、自分らしいものを作りたいんです。
いろんな仕事がありますけれども、それぞれ違います。もちろん根底にあるのは花ですが、それぞれ違う仕事ですので、日々チャンネルを切り替えているような感じです。だからいつも、自分の中で新鮮さがあるんです。日々、朝から晩まで休みなく、いろんなことが起こるんですが、それぞれ一生懸命やっています。
60歳になったので、肉体的には、若いころと同じ動きが難しくはなっています。だけどその分、いろんなものに対しての見方や、さまざまな蓄積も増えたので、深みが増しているように思いますね。

過去、現在、そして未来へ
── 生活面の変化はいかがでしょうか?
假屋崎 年を取るって、いやなことのような感覚もあるとおもいますけど、年季が入らないと表現できないものもあります。10年、20年前だったら、こんなことはできなかっただろうなというものがいろいろあります。でも、まだ終わりじゃないんです。これで完成した、っていう感覚はまったくない。
たとえば、目黒の雅叙園で17年間展覧会を開催していました。毎年、お客様に喜んでいただくために作品を完成させます。でも、発表してしまったら、自分にとってはすべてが過去になってしまうんです。目の前に次の別なものがあって、こんどはそっちに取り組む。その先にも、未知の世界がある。
過去・現在・未来というものを見つめながら、仕事をさせてもらえているということは、とても喜びが多いですし、責任感もあります。いつまでも過去・現在にこだわらないで、自分の新しいものが生み出せるような感覚があります。本当に、挑戦をしていく、チャレンジャーという気持ちを忘れないで、続けていきたいと思います。
次の10年後に向けて
── これからの10年は、どんな未来がみえているのでしょうか?
假屋崎 やはり、デザインするということですね。お花は、ひとりでも多くの方に知っていただいて、楽しんでいただきたいと思います。まだまだ興味があっても、花をいけるという方は少ないと思うので、子どもからお年を召した方まで、もっと広がってほしいと思います。花という世界に、もっと注目してもらいたいですね。フランスやオランダでは、みんな花を買うことが日常なんです。それに比べると、まだまだ日本は、花を取り巻く環境が違います。もっともっと花が買われて、経済効果も出ていけばいいですよね。
その一方で、花だけではなくて、いろんなデザインの仕事を、これからしていければと思います。インテリアや食文化など、ありとあらゆるものの中に「花の文化」があります。そういったものがどんどんつながっていくような気がしますね。そして、花のプロデューサーのようなものになれたらいいですね。
自分がデザインをしたものが、生活の中で楽しんでもらえるものになってほしいと思います。「花からはじまるライフスタイル」、「花はこころのビタミン」、これがキャッチフレーズです。花というものがもっている力を、もっと生活に取り入れてもらえるような仕事をしていきたいですね。
読者へのメッセージ
── 最後に、読者の方、これから読者になる方へのメッセージをお願いします。
假屋崎 こころを込めて作らせていただいた一冊ですので、どうか皆様のお手元に届いてくれればと思っております。思い出深い本になりましたので、手に取ってくださった方にも、喜んでもらえると思います。展覧会などでも手に取ってみていただけますので、ご購入いただければ嬉しいです!(終)

 假屋崎 省吾(かりやざき・しょうご)
華道家。Kariyazaki Flower Professional Education School 主宰。
美輪明宏氏より「美をつむぎ出す手を持つ人」と評され、日本はもとより世界各地で個展やイベントを開催。花と音楽、花とファッションのコラボレーションイベント、着物やガラス花器、ジュエリー、スカーフ、アーティフィシャルフラワー、棺、骨壷などのデザインおよびプロデュースをはじめ、花と建物のコラボレートとなる個展〝歴史的建築物に挑む″シリーズも展開。近年は“花育”をはじめとする社会貢献活動にも積極的に取り組んでいる。現在、TBS「中居正広の金曜日のスマイルたちへ」、MBS「プレバト!!」の大人気企画、いけばな才能査定ランキングなどの番組に出演し、様々な分野で幅広く活躍している。


『假屋崎省吾 花の道』(春陽堂書店)假屋崎省吾・著

假屋崎省吾の華道歴35周年を記念しての愛蔵版写真集。華麗なる美の世界をフルカラーで堪能!近年のダイナミックな作品群・多彩な素材と豊かな色彩を究めた“いけばな”の作品群・35年の華道歴の原点と、ターニングポイントとして刻まれた作品群をクロニクルに紹介。特別付録「華道歴35周年 華寿記念 假屋崎省吾の世界」は、A4サイズ×5面(長さおよそ1m)の屏風型。 圧巻のパノラマワイドサイズで、詳細に作品を堪能することができ、インテリアとして飾ることも可能。裏面には假屋崎省吾の写真と言葉も掲載。
この記事を書いた人
春陽堂書店編集部
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